「これが絶対に必要だ」と強い意志をもって
System / Software /
Circuit Design Technology Development
Masaki Unno
海野 正樹
システム・ソフトウェア・回路設計技術開発
2011年度入社/システム工学専攻
設計と製造のベースになる
デザインルールを策定
半導体、特にフラッシュメモリの事業では、お客様から求められる性能を満たしつつ、いかに安く作るか、コストパフォーマンスに優れるものづくりが重要になります。「安く」が第一のキーワードで、例えば、チップサイズを小さくして、1枚のウエハーから多数のチップを得ることで安く作る方法もあれば、チップサイズを作りやすい大きさにすることで製造プロセスのコストを下げるやり方もあります。第二のキーワードは「歩留り」で、できる限り不良品の発生を抑えて良品を多く作れるよう、ものづくりの歩留りを上げる努力が大事になります。
一方で、フラッシュメモリの進化はとどまるところを知りません。私は入社以来、3次元フラッシュメモリBiCS FLASH™の設計開発に携わってきました。いま主力である第3世代の64層BiCS FLASH™は、1枚で32~64ギガバイトもの大容量を確保しています。しかしそれは、ウエハー上にnm単位の孔を1.7兆個も同時形成するという超微細加工を実現できたから。「安く」「歩留りを上げる」と言葉で語るのは簡単ですが、開発側の回路設計と製造側のプロセス技術、双方にブレークスルーが求められるうえ、相反する問題も少なくないため、どちらもが納得できるよう「最適なデザインルール」を決める必要があります。
私は、この製品づくりの土台になるデザインルールを策定する「コアレイアウト」を担当。回路設計者とプロセスエンジニアの間を結び、やりとりを重ねながら、コストパフォーマンスを最大化できるよう、持てる力を尽くしています。
逆転の発想で
チップサイズの大幅な縮小に成功
最も印象深いのは、第3世代の64層BiCS FLASH™のプロジェクトです。私は、第2世代の48層BiCS FLASH™からチップサイズを大幅に縮小。1枚のウエハーから得られるチップを増やしてコストを削減しようと考えました。そのために、回路動作にとって本来は好ましくない寄生容量を使用する方式を採用。問題点を逆手にとって問題を解決するという、逆転の発想に思い切ってトライしたのです。アイデアは以前からありましたが、実際に製品に適用できた事例はなく、難しいのは承知のうえで、「これが絶対に必要なのだ」と意志を固めて挑みました。
回路設計部門では、連日のように回路図やレイアウトを更新してはまた新たな問題に対処する毎日。プロセス部門では、厳格な工程管理、寸法管理に苦心を重ねる日々が続き、私も参加して議論を交わしました。さらに製品技術、デバイス技術、リソグラフィ設計の技術陣の協力も得て、数々のデザインルールを前世代比で大幅に縮小することができたのです。それだけに、「これでいける」という試作品のウエハーが手元に届いた時、すべての苦労が一気に吹き飛んだ気がして、まさに感無量でした。
日本とアメリカの3つの
拠点を結ぶ架け橋に
現在は第5世代BiCS FLASH™のコアレイアウトを、当社が協業しているウエスタン・デジタル社(WDC)の技術者とコミュニケーションを取りながら進めています。もともと英語力を磨く必要があると思っていたので、入社後5年ほど、会社の福利厚生制度を利用し、英会話スクールに通ってスキル向上に努めました。最近では週1~2回、英語の会議に出席しており、アメリカのエンジニアとメールでのやりとりも増えています。いずれ出張する機会もあるでしょうし、四日市工場のプロセスエンジニアと横浜テクノロジーキャンパスの回路設計者を結びつけるだけでなく、WDCのメンバーとも連携を深め、日本とアメリカの3拠点を結ぶ架け橋になって、グローバルに活動していきたいと考えています。
もうひとつ、次世代・次々世代のBiCSをコアレイアウトの立場から展望すると、市場が求める性能要求とともに技術の敷居はますます高まると感じています。大容量化で低価格を実現して競合に打ち勝つには、さらなるプロセス技術の向上が必要で、難度は格段にレベルが上がります。最適な「デザインルール」策定もまた困難を極めるに違いありません。「安く」「歩留りを上げる」を目指すには、従来を超えるブレークスルーが必須です。「絶対に必要」と確信を持てる、次のコアレイアウトを見出すべく、これまで以上の高みを目指しているところです。
私が当社を選んだ理由
「ベンチャーの起業や企業との共同研究に力を入れている先生のもとで学びたい」と、大学院の研究室を選んだ私。社会でも数年後の製品につながる研究開発に携わることを望んでいました。当社の説明会で、「自分が研究した技術を、事業部門での製品化まで担当した」という先輩の実体験を聞き、研究開発から製品化して市場に出すまで、一連の流れに携わる可能性があると分かり、魅力を感じて志望しました。
学生のみなさんへ
キオクシアは世界で戦っています。そしてこれまで、難しい技術課題に直面するたびに、ブレークスルーを見つけて解決し前進してきました。それはこれからも変わりません。社内では、多様なバックグラウンドを持つ技術者が、国籍や性別、年齢を超えて、お互いに切磋琢磨しています。半導体専攻かどうかは問いません。ダイバーシティを尊重し、多様な意見を受入れ、変化を恐れずに挑戦する人が、わくわく心を踊らせて活躍できる会社です。
掲載日/2018年3月1日 ※所属・役職・仕事内容は掲載当時のものです