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ドクターのキャリア

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キオクシアには博士課程を修了して博士号を取得し、
専攻分野や研究体験をベースに活躍しているエンジニアが多く在籍しています。
ドクターならではの知見・経験を活かして、実際にどのようなキャリアを歩んでいるのか。
中堅社員とベテラン社員の二人の対談を通して紹介します。

PROFILE
  • 宗 勇樹
    宗 勇樹

    2012年度入社/情報電気電子工学専攻博士(工学)
    メモリ事業部
    ファイルメモリデバイス技術部
    3次元メモリ担当
    主務

  • cross
  • 前田 高志
    前田 高志

    2006年度入社/物理学専攻博士(理学)
    メモリ技術研究所
    デバイス技術研究開発センター
    設計技術開発部 設計技術第一担当
    グループ長

※本動画は2022年1月に撮影されたものです。
※所属・役職・仕事内容は撮影当時のものです。

/01 入社のきっかけ・理由

博士課程を修了して
キオクシアへの入社を決めたのは、
どうしてですか。

前田 大学院で5年間、私は紙と鉛筆で素粒子理論の計算式を解く毎日を送ってきたので、修了後は研究を続けるより、世の中に近い問題を解きたいと思い就職する道を選びました。
とはいえ、理論物理学に直結する企業はないだろうと、いろいろ業界を見て回るなかで、物理と関わりのある「半導体」に目が止まったのです。幅広い専攻の技術者が集っているうえ、動きの速い業界だけに、最初は詳しくなくても、頑張れば追いつけそうだと思いました。たまたま研究室の先輩が半導体部門におられたので、入社後の研修や仕事内容、私にはどの部門が合いそうかを聞くことができ、やっていけそうだという感触をつかめたので、入社を決めました。
私は、半導体デバイス(素子)をテーマに博士論文をまとめました。そのため、今の仕事と大学時代の専攻が直結していますが、就職活動の際は、特に半導体業界に絞って行っていたわけではありません。ドクターに進んだけれど、”いずれ企業で役に立ちたい”という気持ちがあり、研究を続けるよりも就職し、製品開発などに携わりたいと思ったことが、一番のきっかけです。
就職活動のタイミングで自分と向き合う時間ができたので、「本当に自分がやりたいこと、夢って何だろう?」と考えぬき、”世界一にチャレンジしてみたい”と思い立ちました。そこで、”世界一”をキーワードに探していたら、研究室の先輩が在籍されているメモリの事業部が、フラッシュメモリで世界と戦っている、そしてドクターも採用していると知り、自ら手を挙げました。シェアが世界2位だったので、”世界一を目指せる”とシンプルに思ったのです(笑)。
前田 博士の就職活動では、自分からアプローチしていけば話を聞ける人や会える人もいるので、そこから自分に何が合うか決めていくほうがいいのでしょうね。私たち二人は研究室の先輩に出会いましたが、先生のルートで紹介してもらえる可能性もあるし、そうでなくても積極的にいろいろな人に会って話を聞いて、自分に合った進路を見極めることが大事だと思います。
/02 これまでのキャリア

入社してから現在までの
キャリアを教えてください。

前田 入社してすぐ、3次元フラッシュメモリBiCS FLASH™のプロジェクトにアサインされました。今は3次元フラッシュメモリが世界の主流になっていますが、当時は次世代メモリの候補のひとつとして開発がスタートしたばかりで、形になるかどうかも分からない時でした。私は、回路設計チームの一人として試作品を評価しながら構造や動作を知る勉強から始め、徐々にデバイス開発のメンバーと議論を交わしながら、3次元フラッシュメモリの回路はどうあるべきか、どう動かしたらいいかなど、検討を進めていきました。フラッシュメモリは、それまで2次元の平面構造でした。そのため、書いたり読みだしたりする回路とデバイスの関係性は、上から見ればイメージできました。一方、3次元フラッシュメモリは立体構造になるので、どこでどうつながっているかをイメージするのが難しくなります。その点、私は当初から開発に参画していたので、イメージをつかめていました。開発が本格化し、メンバーが増えていくなか、新メンバーがイメージをつかめないという声が挙がったので、私が回路設計とデバイスの間を取り持って、3次元フラッシュメモリにおける構造のキーポイントを説明する役割を担いました。回路の基本設計に入る段階で、そこは貢献できたと思っています。
私は最初に製品技術部に配属され、NAND型フラッシュメモリの信頼性をつくり込む仕事に就きました。メモリにおいて情報を記憶する最小単位となるセルの開発基礎を3ヶ月ほど学んだ後、四日市にある先端メモリ開発センターに行きました。ユニットプロセスを組み合わせ、デバイス構造を形成するプロセスインテグレーションのチームに所属し、ウェハからデバイスをつくり込むまで、一連のフロー(工程)をコントロールする業務を2年半ほど経験。再び製品技術部に戻った直後にBiCS FLASH™の製品化が決まり、私も同プロジェクトに参画しました。
以来、メモリにおけるセル開発を担当していますが、四日市にいるセルデバイス開発チームと連携しながら進めていくので、プロセスフロー(製造工程)を理解していなければ上手くいきません。先端メモリ開発センターでプロセスインテグレーションを体験できたおかげで、プロセスフローを3次元フラッシュメモリの構造と紐づけてイメージできるようになり、とても役に立ちました。
前田 BiCS FLASH™が製品として初めて世の中に出たのは2015年です。海のものとも山のものとも分からない時から10年間、私はずっと関わってきたので、出荷された時の感慨は格別でしたよ。
私が関わったのは製品化の最後の段階で、期間も短いのですが、サンプル出荷をして認定をもらって、世の中に出ていくのを目の当たりにできた達成感は、やっぱり大きかったですね。
前田 なんとか製品化できたので、せっかくならもう一度、新しいメモリの立ち上げに関わりたいと思い、そちらに進む道を選択しました。その際にスタンフォード大学に留学する機会をもらうことが出来ました。もともと大学では理論計算をやっていたので、今度はメモリデバイスの数値計算をテーマに1年半、研究に打ち込みました。
例えば、構造や膜の組成を変えると特性がこうなるはず、という数値計算ですね。実際にものをつくって評価して行うトライ&エラーは費用も時間もかかるので、シミュレーションは今後ますます重要になりますね。
/03 現在の仕事内容

次に、いま取り組んでいる仕事について教えてください。

BiCS FLASH™の積層化が進むなか、ずっとメモリのセル開発に携わっています。いつも、その時点での限界を目指すにもかかわらず、次の世代はさらに先に進まなければなりません。壁は高いけれど、乗り越えた先に世界一のデバイスがあるだろうと、それをモチベーションに頑張っている感じですね。正直、どんどん難しくなるし、お客さまの要求も増すばかりですから、ハードルは高くなるいっぽうです。
前田 私はアメリカから帰国した後、グループ長の立場で次世代メモリの開発チームを率いています。NAND型フラッシュメモリが2次元から3次元へと進化したように、次はいつどんなものに置き換わるのか。次世代技術を実現するにはどうしたらいいか。新規のメモリ動作や回路設計について、メンバーと議論しながらデバイスの検討を進めたり、材料開発の方向性を探究したりしています。
いくつもの可能性を探索して、メリットや問題点を考察するリサーチですね。さまざまな角度からメンバーがアプローチしているので、私は一緒に、何がどのくらい芽がありそうか、何をターゲットにすべきかといった議論を重ねています。
グループ長としてマネジメントもされていますよね。
前田 はい、チームとしてどう成果を上げていくかを先頭で束ねる役割には、また違う面白さと難しさがあります。一人ひとりに適したテーマを振ったり、教育方針やキャリアパスを考えたり、面談で希望を聞いてアドバイスしたり、会議で気づいたことを指摘したり…メンバーが研究活動をうまく進められるようアシストしつつ、広く最先端の情報をキャッチできる立場にあるので、楽しみながらやれています。
/04 博士課程で学んだ意義

博士課程まで進んで学んだ経験は、
仕事にどう活きていますか。

前田 研究していた理論物理学そのものは、直接はつながっていないです。ただ、物理や数学の基礎的なことを深堀りしてきたので、土台になる基礎知識を応用するのに活かせています。新しいデバイスや材料に触れる機会が多く、これまでにないような特性やメカニズムも出てくるので、物理の基礎を把握していれば応用がきくし、回路設計者として概念をつかみやすいと感じています。
原理原則が分かっていれば、メモリで電子はこうふるまうというポイントを押さえられます。そうしたベースがドクターにはあるので、専門とか関係なしに応用できますよね。
前田 そうですね。博士課程まで進むと、自分の研究テーマをいろいろな目線から、3年、5年かけて見ていくわけで、研究者の素養がしっかり身につきます。専攻と異なる分野に進んでも、最初は分からなくても、やっていくうちに素養が活きてきます。特に半導体業界は、新しいアイデアを次々に打ち出す必要があるので、それぞれが違った視点から成果を出せると思います。
あえて専門を気にしない勇気、違う世界に視野を広げる勇気も大事ですね。ドクターで極めた専門が当てはまれば、それはそれでいいと思いますが、私の場合でも、半導体を専攻して得た知識以上に、研究生活を通して「考える」クセが身についたのがとても仕事に活きています。キオクシアは最先端のアカデミックな研究から、製品技術のような泥臭いところまでフィールドも広いので、専攻にとらわれず活躍できると思います。
/05 これからチャレンジしたいこと

キオクシアでの
これからの目標を教えてください。

まずはいま携わっている新製品の立ち上げを最後までやり切りたいです。その中で、プロジェクトを率先して引っ張る存在でありたいと思っています。
役割や役職に関係なく、挑戦する人にチャンスが与えられる風土ですから、どんどんチャレンジしていきたいですね。
前田 私は、もうひとつ新しいメモリを製品化したいと思っています。BiCS FLASH™を超える画期的なメモリを生み出す場に立ち会いたいというのがいちばんの目標です。

最後に、
いま博士課程で学んでいる人たちへのメッセージをお願いします。

プロジェクトを牽引するには、目的や背景をメンバーに分かりやすく伝えなければなりません。それって、論文を書くことと同じなんです。ドクターを取った人は、背景から結論へとつながるストーリーをロジカルに組み立てるスキルが身についているので、専攻にこだわり過ぎずに攻めてみてほしいです。それと、自分の型にはまらなかった場合でも、諦めないでやり続けることですかね。
前田 やってみないと分かりませんから、とにかくいろいろやってみる。ドクターを取った人は、何かしら失敗しているので、失敗しても諦めない姿勢があるところも強みだと思います。あとは楽しんでやれるかでしょう。半導体業界は裾野が広いので、多様な方に来ていただきたいし、何よりキオクシアは立場に関係なく思ったことを提言できる会社だと思っているので、自分なりに大いに意見を発信して新風を巻き起こしてほしいです。
研究が好きで、博士まで楽しく進んできた才能を、キオクシアならさらに伸ばせる。ドクターが自由に大胆に活躍できる環境があるということです。

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