次世代の知的財産を
Intellectual property
Yoshito Hunase
舟瀬 芳人
知財
2013年度入社/電子・物理工学専攻
“on”か“above”かまで意識して
出願書類を作成。
私が携わっている知的財産部の権利化業務担当は、社内で新しい発明が生まれた時に、特許事務所など外部専門機関の協力を得ながら、発明者をサポートして特許を出願。いち早く権利化(特許取得)を実現して、技術競争の優位性を確保する役割を担っています。
デバイス、回路、プロセスなど技術分野別に担当が分かれており、私は最先端のメモリ技術を受け持っていますが、最も重要なのは「独創性が認められて特許を取得できるよう、発明の要旨を出願書類にまとめる」文章化の作業です。当社の場合、海外のライバルメーカーと競合しているため、日本だけでなく、アメリカや中国、台湾など世界の国々で特許を出願・取得しなければなりません。英語や中国語の書類も必要なわけで、日本語で書類を作成し、専門家が翻訳したものを検討する作業を繰り返し、ドキュメントを仕上げていきます。
例えばですが、あるものが何かの上にあるとして、前置詞は“on”と“ above”のどちらがいいのか、そうした細かいところまで精査します。表現が抽象的だと、仮に取得できたとしても、訴訟などで問題になる可能性もあるので、誰が読んでも納得がいくよう、どの言語でも、できる限り具体的で明確な表現を意識しています。
ウェハの運び方で特許取得に成功し、
発明者の表彰に貢献。
特許権の取得には出願から数年を要しますし、その間に各国の特許機関とのやりとりや修正などもあるので、私たちは常に同時並行で多数の案件に関わっています。どれも興味深いものばかりですが、なかでも印象的だったのは、入社3年目、権利化担当として独り立ちして間もない時に、発明を説明する明細書を私が作成する業務を担ったことです。その頃に書いた明細書が数年後に特許を取得できただけでなく、搬送コストの低減に成功し、発明者が表彰を受けるところまで貢献できた案件です。
ウェハを運ぶ際、外部の衝撃から保護するために、発泡スチロールの緩衝材を使うのですが、従来はパッケージの全面をカバーしていたため、費用が嵩んでいました。それを、容器構造の工夫により、一部にだけ発泡スチロールを使えばいいようにして、材料コストを大幅に低減したのです。この構造の特徴を文章で的確に表現するのが難しくて、2ヶ月くらい、発明者や弁護士、部の先輩たちと議論を重ね、『誰がどう見ても決まり』と言える書類を完成させました。まさに知財を会社の財産につなげることができて、嬉しかったですね。
会社の将来にも関わる責務に
従事する毎日が楽しい。
私が担当しているのは10年後20年後、超高速・超大容量の次世代メモリを実現する特許の取得です。先を越されないよう、他社の動きや海外の判例等を踏まえながら、発明者とコミュニケーションを取って、いち早く抑えておきたい「技術の鍵」を見出し、権利化を図ります。会社の将来にも関わる責任ある業務だけにプレッシャーはありますが、それ以上に、発明者からは最先端の研究開発について、法務のエキスパートからは知財の法律を、アメリカやアジアのエージェントからは海外の最新情報を…と、いろいろなバックグラウウンドを持った人たちと協働することで、視野が大きく広がるので毎日が楽しくて、苦労を感じたことはありません。
何よりも権利化できれば、私が主体になって書類に表現した内容が、世の中に発表されて長く残り、技術の進化と会社の発展に貢献できるのです。さらに未来だけを見ているのではなく、過去に取得した特許をうまく引き継ぎ、継続して権利を確保する。訴訟の可能性がある現在進行形の問題に対し、当社の優位性を示す資料を用意するなど、時代との関わりも長期間にわたります。知的財産を軸に幅広く物事を見て、マルチタレントに成長して活躍できるのが、この仕事の大きな魅力だと思います。
私が当社を選んだ理由
出身は理系ですが、性格的に黙々と研究に打ち込むタイプではない、といって商社や金融も肌に合わないと感じていました。そこで、少しずつ絞り込んでいった結果、浮かんできたのがメーカーの知財部でした。電子工学や半導体の知識を活かせるし、法律にも強くなれると思ったので知財の仕事に興味を持ました。なかでも当社は特許出願件数がとても多いうえ、新入社員を知財部に積極的に配属していると聞いて、魅力を感じました。
学生のみなさんへ
学生生活、社会人生活を問わず、いろいろな人とコミュニケーションを取りながら、多方向に目を広げていく取り組みが大事だと思います。大学の専攻とか、会社での部署とかにとらわれず、さまざまな分野で活動している人と接することで、新しい世界が開けるからです。勉強でも仕事でも、与えられるものを受け身でこなすのではなく、何でも自分から積極的につかみにいく姿勢を持つほうが、密度の濃い毎日を過ごせるのではないでしょうか。
掲載日/2019年3月1日 ※所属・役職・仕事内容は掲載当時のものです