3回の産休・育休・復職を体験しつつ、
メモリ工場の機械学習活用をドライブ。

  • サブリーダー
  • 機械学習の先行者
  • 国際シンポジウム最優秀論文賞
  • 情報文化学部卒
  • 12歳・10歳・3歳、3人の子育て中

AI Engineer
Production Technology Division
Yukako Tanaka

田中 祐加子
四日市工場 第二生産技術部
プロセスインテグレーション第一担当
2004年度入社/情報文化学部卒

新卒なのにキャリア採用。
設計だったのに工場を選択。

入社して16年、キャリアとライフイベントを軸に、私のこれまでを振り返ると、大きく3つの期間に分けられます。
第一期は2004年4月の入社から2012年3月、二番目の子の育休が終わるまで、エンジニアとワーキングマザーの土台を築いた期間です。大学は情報系で論理学を専攻しましたが、ものづくりに関わる仕事をしたいと思って、キャリア採用の枠で当社に入りました。というのは、当初就職する予定だった海外メーカーの内定が業績悪化の影響で突然取り消しになり、日本のメーカーに手当たり次第に電話をしたところ、「新卒採用は終わり」と断られ続けたなか、当社だけがキャリア採用でも良ければと扉を開いてくれたからです。

配属先はフラッシュメモリ設計部で、半導体の基礎的な勉強から始めて、設計中の製品の評価などを経験。四日市工場の実習では、製品技術部で新製品の立ち上げに携わり、ものづくりの現場の楽しさを体感しました。その後、一旦は設計に戻ったのですが、若手技術者の交流の一環として2006年から2年間、四日市工場の生産技術部に所属。300mmウエハーの生産プロセスを立ち上げるプロジェクトに参画し、ますます製造現場の魅力に取りつかれました。
並行して2006年に結婚し、2008年9月に第一子を出産。産休・育休を経て翌年10月に復職したので、2年で設計に戻る予定でしたが、『工場に残りたい』と希望。以来、2010年12月に第二子を出産し、2012年4月に復職…という流れで、今に至るまで四日市の工場で生産技術の仕事・家で家事と育児という生活を送ってきました。

「歩留まり新聞」を工場に展開。
機械学習の面白さに魅せられる。

第二期は2012年4月から2018年6月まで。2回目の育休から復帰し、今度は製品の欠陥検査データを分析して品質向上につなげる仕事に就いたのですが、それまで工場の生産現場を注視してきた経験から、『この工場にはデータがたくさんある。うまく使えば何かできるのではないか』と気づいて、私なりに機械学習への関心が芽生えました。
ちょうどその頃、タイムリーなことに前社長の成毛さんが『もうすぐAIの時代が来る』と、先見の明で機械学習の活用推進を提起されたのです。研究所の専門家の協力のもと、プロジェクトが発足し、私もメンバーの一員として参加しました。

四日市工場の場合、様々な製造装置や複雑な製造工程から24時間リアルタイムで集ってくるビッグデータは、1日当たり20億項目にも達します。それらを、機械学習でどのように解析すれば、有用な情報として提供できるのか。私たちは試行錯誤を繰り返し、苦労を重ねて、「歩留まり新聞」を誕生させました。ざっくり説明すると、機械が工場の膨大なデータを収集・分析し、電子的な新聞として毎朝情報提供してくれる「歩留まり解析支援システム」で、これは人工知能学会の現場イノベーション賞・金賞に輝くなど、ものづくりへの機械学習適用の先駆けとして高い評価を受けました。
特に後半、私は工場への展開を担当したので、現場の反応に耳を傾けながら、使って喜ばれるシステムにまとめる作業が大変であり楽しくもあり、いつしか機械学習の面白さに魅せられました。ようやく定着してきたと感じ始めた矢先の2017年、第三子の妊娠が判明。11月に出産し、そこから7ヶ月間の育児休暇に入りました。

四日市工場はデータの宝の山。
日本初の機械学習が当たり前の工場を実現する。

復職3回目の2018年7月から現在までが第三期です。「歩留まり新聞」のその次を目指す新チームが編成され、私はサブリーダーに任命されました。テーマは「新製品を立ち上げる時の歩留まり改善」。一般に機械学習はビッグデータが対象で、量産立ち上げ前のスモールデータしかない領域への適用は難しいのですが、そこに工場現場の強いニーズがあると分かっていたので、先んじてフロンティアを拓こうと、若手メンバーを率いて挑戦。何とか開発に成功し、半導体関連の国際シンポジウムで最優秀論文賞を受賞しました。

私は「機械学習シアター」と呼んでいますが、四日市工場は機械学習やAIに興味のある技術者にとって、非常にやりがいのあるステージです。メモリの生産プロセスはデータの宝の山であり、機械学習やデータマイニングの実践に最適な環境が整っているからです。私の今後のキャリアとも重なりますが、プロデューサー的な立場で若手を巻き込み、「機械学習が当たり前の工場」を日本で最初に実現していこうと前進を続けています。

また、ワーキングマザーとしても、後輩の道しるべでありたいですね。3回の産休・育休を取得し、時間短縮勤務やフレックスタイム制を利用してきたなかで、私自身が長時間働く必要のない職場をつくりたいと思ったのも、機械学習に注目した理由のひとつでした。限られた時間を活用して仕事も子育ても楽しもうと、休みや遅出・早退は胸を張って取るようにしています。こうしたポジティブなワークライフバランスのあり方を自ら体現するのも、大事な役割だと確信しています。

掲載日/2021年1月 ※所属・役職・仕事内容は掲載当時のものです。

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