「技術に対して誠実な技術者でありたい」
この信念を胸に、仕事と育児の両立に励む。
- BiCS FLASH™開発チーム
- サブリーダー
- 素粒子物理学専攻修士了
- 子ども1人
- 育休・時短勤務を活用
石月 恵
先端メモリ開発センター
先端技術開発チーム サブリーダー
2007年度入社/素粒子物理学専攻修士了
私は子どもの頃から物理が好きで、大学・大学院では原理原則に基づいて現象を紐解き、理論を組み立てていく素粒子物理学を学びました。一方で、ものづくりがやってみたいという思いもあり、就職活動の際、同じ研究室出身の当社の先輩から「物性物理の知見をベースに、新しいメモリを開発している」と聞いて、興味を持ちました。半導体は専門外でしたが、基礎物理の応用分野なのでつながりはあるし、超微細な技術の探究が面白そうだと思って入社を志望したのです。
タイミングも味方してくれました。私が入社して先端メモリの研究開発部門に配属された2007年は、当社が世界で初めてフラッシュメモリの三次元積層構造を公表した年。BiCS FLASH™と名づけられて開発が始まったばかりで、その立ち上げ期のチームに参加できたのです。2年ほどデバイス開発に携わった後、インテグレーション開発に異動になり、産休・育休をはさんで現在に至るのですが、過去世代から現在開発中の世代までBiCS FLASH™の進化とともに歩んできました。幸運だったと感謝しています。
振り返ると、1年目2年目のデバイス開発で、メモリ技術をひととおり学んだのが土台になりました。電気特性の評価に夢中になって、計測器の針を壊してしまったり、クリーンルームで迷子になったり、失敗も体験しつつでしたが、上司と先輩の温かい指導のおかげでしっかり基礎を固めることができました。そして3年目、「BiCS FLASH™のデバイス構造の最適化」をテーマに、半導体デバイスの国際会議・IEDMで研究発表を行ったのが、最初のステップアップだったと思っています。
インテグレーションは、メモリデバイスの開発と生産プロセスの間を橋渡しする役割を担います。デバイス開発のコンセプトを受けて、どういう構造でどういうつくり方をすれば量産化できるか。ユニットプロセスのエンジニアと連携して最適な生産フローをつくり込み、工場に移管して量産化を立ち上げるまで、製品化の鍵を握る工程を取りまとめる仕事です。
モジュール単位で分担する体制なのですが、ワード線の引き出しになる、階段型の構造をした部分を最も長く担当してきました。リーダーのもと、実働部隊の主担当を務めたのですが、最も印象に残っているのは、第二世代 BiCS FLASH™の量産展開に向けた仕事でした。なかなかうまくいかなくて、正直なところ、これまでの会社生活の中で最も大変な時期だっただけに、みんなで一生懸命頑張って、苦労に苦労を重ねて、ようやく量産展開できた時の達成感は最高でした。「製品として世の中に出して、多数の人に使われることが、企業の中の研究開発の面白いところ」と分かって、ものづくりの苦労と醍醐味を身に沁みて感じました。
引き続き、いくつかの世代の階段モジュールを担当。成果が評価されて2015年に主務に昇格。新規材料の開発でも社内表彰を受けるなど、周りのみなさんにたくさん助けていただきながらスキルアップしてきました。その後結婚・出産・子どもが満1歳になるまでの育児休暇を取得し、キャリアの面では1年ちょっとのお休みを経て、復職後にサードステップへ進む形になりました。
復職してから約2年半、朝1時間・夕方1時間の時間短縮勤務制度を利用しました。実際に子育てをしながら仕事に戻ると、思いも寄らない問題に直面します。小さい子は急に熱を出すことがあると分かっていたのですが、その風邪を自分がもらってしまうことを想定していませんでした。私も体調が良くないのに、子どもをケアして出社して仕事をして、帰社してまた家事や子どもの世話…主人が手伝ってくれたとはいえ、フルタイムの勤務だったらとても厳しかったと痛感しました。現在は子供も丈夫になり、またフルタイムで働いています。当社の場合、育休は子どもが3歳になるまで、時間短縮勤務は小学校6年生まで、自分で希望する期間を決めて利用できます。もちろん、制度はあるけれど利用し辛いといった心配などまったくありません。自分自身がワーキングマザーになって、本当に手厚いサポートだなと嬉しく思っています。
少しずつですが、仕事と家庭の両立に慣れてきましたし、プロジェクトでは階段モジュール担当から離れ、次世代BiCS FLASH™ のインテグレーション開発を幅広く手がけるサブリーダーを任されています。ずっとBiCS FLASH™に関わってきたので、製品に対する愛情は人一倍ですし、今はコンセプトを決める段階から参画できるので、ますますモチベーションが上がります。
そのうえ、私の周りには、『仕事だから働くのではない。自分たちの手で最高のものを開発し、世の中に出して社会に貢献したい』と情熱にあふれてものづくりに打ち込む人が集っています。そうした熱い仲間たちと一緒に、私なりに技術を追究してチームの役に立ちたいと一日一日、目の前の山を一歩ずつ登っているところです。
何よりも私は「技術に対して誠実な技術者でありたい」と考えています。この姿勢を貫いて頑張っていれば、キャリアは自然についてくると信じています。
掲載日/2021年1月 ※所属・役職・仕事内容は掲載当時のものです。
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